たまのおいとま

めぐりあわせのおかげで海外でしばしおいとまいただくことになった会社員の冒険と発見と悟り

本の話「噛みあわない会話と、ある過去について」③

私は最初それができなくて苦しみました。香港で少しずつ育まれていた自尊心を失いそうにもなりました。

そこから回復して、先ほど書いたような発想に至れたのは、夫が、今書いたような考え方について話して聞かせてくれたおかげです。

 

結局、その場にいた複数の人が同じことを経験しているように見えて、誰の心にも同じ出来事は一つもなく、それぞれの人が、それぞれの人の色眼鏡で同じ出来事を見ているだけなのだと思います。

(今期のドラマの「ミステリと言う勿れ」第1話でもセリフにありましたね)

 

それぞれの人の色眼鏡で見た世界を交換し合うとき、それが「噛みあわない会話」になるのは当たり前のことで、でも、だからこそ大事なのだと思います。

 

私たちは普段、相手から見える世界を何とか想像で補って、相手を大事にしようとします。
でも、それはかなり難易度の高いことをしていて、本当は当たる確率がすごく低いことだと知っておく必要があると思います。

 

そもそも、それが当たったかどうかも、ほとんどの場合は明確になりません。

相手が笑っていても、どういう気持ちでその人が笑ったのかは、本人が正直なところを話さない限り分からないのです。

そして、本人も、それが自分の世界での、勝手な気持ちだと分かっているから、わざわざ相手に伝えないことも多々あると思います。

 

そうしてお互いがお互いに対してする、けなげな努力がかえってすれ違いを生み、自然と距離が遠くなったり、何かの出来事をきっかけにして正面切って対立したりします。

でも、その相手が本当に自分にとって大切な人なら、何となく縁遠くなるよりも、一度お互い向き合って、正直な思いを伝えあうことが必要なのだと思います。

                               つづく