たまのおいとま

めぐりあわせのおかげで海外でしばしおいとまいただくことになった会社員の冒険と発見と悟り

本の話「噛みあわない会話と、ある過去について」①

先日、同期に紹介されて、辻村深月さんの「噛みあわない会話と、ある過去について」を読みました。

後味が悪いんだけど、職場でこういうことってあるよなあって思ったんだよね!と言っていたその子の言葉通り、考えさせられる話でした。

 

考えさせられると共に、少し前の私だったら、感想が違ったかもしれないと思いもしました。

少し前の私なら、「本当にこんなことあるの?怖い!」という感想だったと思います。

 

でも今の私は、「うん、あるある、こういうこと・・・でもだからこそ、簡単には揺らがない、でも柔軟に変わっていける自分なりの価値観を見つけないといけないんだろうな」という思いを持ちました。

 

短編でいくつか話があるのですが、一番印象に残ったのは、芸能人と母校の先生の話と、記者になったクラスの人気者が社会的に大成功を収めたいじめられっ子を取材しに行く話です。

                              

ざっくりと内容を要約すると、一人の人が良かれと思って(もしくは、特に大した重要性も感じずに)やったことが、もう一人の人を深く傷つけていて、ずっと言えなかったそのことを、本人を前に話し、本人はその状況がにわかには受け入れられず、喧嘩別れするという話です。

 

でも、私は、この話の続きもありえるのではないかと思いました。

この本の登場人物たちは、まず相手の気持ちを受け入れることに必死だったけれど、そもそも同じことに対する見方がそれぞれ違うことは当たり前で、どちらに優劣もないこと、それでも、相手が傷ついたならそのこと自体は事実であること、を理解していたなら、適切にコミュニケーションが取れて、かえって二人の仲が深まる、ということもあったのではないかと思うのです。

雨降って地固まる、というやつです。

                              つづく