たまのおいとま

めぐりあわせのおかげで海外でしばしおいとまいただくことになった会社員の冒険と発見と悟り

本の話「貧困からの自由―世界最大のNGO・BRACとアベッド総裁の軌跡」⑤

読んでいくとまさにそんな感じで、一つ一つのことそのものは、誰もがやりそうな、思いつきそうなことではあって、それでも、それらのことをこれだけの規模でやっている組織は少なく、結果、珍しいことを成し遂げている、という状態のように思います。

 

だからこそ、何が本質なのか外から見ていても見えにくいし、もしかすると本人たちも気づいていない部分もあるのかもしれないとも思いました。

 

そうした中で、私なりにこれは違いなのではないかと思った部分を書いてみたいと思います。

 

1つは、人々が貧困状態から回復した先の世の中が持続可能な状態で発展することまで考えて支援する、ということだと思います。

もう1つは、関わる多くの人が自分を信じて力を出し合える、そしてそれが正しく評価される環境を作ったことにあるように思いました。

 

BRACがやっていることは本当に手広くて保健、教育、農業、畜産と多岐にわたります。

そのどれもに共通して言えるのは、いずれ自律していけるシステムそのものを作ることを意識していたことだと思います。

 

例えば、幼い子供が下痢で命を落とす地域で、経口補水療法(水と砂糖と塩をある割合で混ぜた液を飲むことで、脱水状態を防ぐことができる)を普及させようとしたとき、最初は、その割合で混ぜた特別な粉のパックを配布しようと試みます。

 

でもそれは人口密度の高いバングラデシュで、保健省で賄える金額を超えているし、有料で売ったら行き届かないし、そもそもそれに説明書がついていても識字率が低くてそれを読める人が少ないという問題がありました。

 

そんな時、BRACがしたことは、塩は何本の指でつまみ、砂糖は何本の指でつまむ、水は誰でも知っているこの単位でこれくらいを使う、そしてそれを混ぜ合わせる、という方法を各村で伝えていく、という手法でした。

                             つづく